home > カンホアの塩とは? TOP > 「カンホアの塩」のコンセプト > 塩の「一物全体」
本来自然界にある食べ物は、すべて様々な成分で構成されているもの。その意味で、サプリメント食品や白砂糖、NaCl99%以上の塩はどうしても不自然な気がしてしまう。では、どういう塩が自然であり、おいしいのか?
収穫直前のカンホアの塩の結晶(拡大)
ひとつのヒントとして、「一物全体」という考え方がある。マクロビオティックという主に「食」に関する考え方のひとつで、つまりは「丸ごと食べること」。英語圏の“Whole Food”とはこの意味だ。例えば、お米なら粒全体(玄米)、また大根なら葉や皮も全部でひとつのバランスのとれた生命体であるから、それを丸ごと食べると、自然とバランスの取れた食品になるという考え方である。「おいしさ」や「自然」と言うと曖昧なところがあるが、この「一物全体」という考え方からスタートすると、ある程度具体的になるのではないかと思う。
では、塩の「一物全体」とは、どういうものか? 私が最初に塩を作ろうと思ったとき、それは、まずは文字通り「海水丸ごとの塩」だった。つまり海水全体の成分(海水から水分を抜いただけ)。よって、カンホアの塩の商品開発の最初の段階では、海水をひたすら天日で乾かして極力海水全体の成分に近づけた塩を試作した。何しろ私は、これを一度やってみないと気が済まなかった。普段、カンホアの人たちは、「いかにNaClの純度を上げるか」、または「いかにニガリ分を落とすか」を念頭に塩を作っている。私が試みているのはそれとは全く逆のことだ。しかしカンホアの人たちは、そんな私の試作を見守ってくれた。そして、徐々に私がやりたがっていることが分かると、アドバイスもしてくれるようになり、成分分析までしてくれた。
左が極力海水全体の成分に近づける実験中の塩
全体に平均にからまるように粒を細かくしている
右は普通に天日干しして出来た結晶の粒
結果として出来上がったのは、「海水丸ごと」というより、ただただ強烈に苦い塩だった。塩辛味よりも苦味の方がはるかに上回った塩(?)。説明するまでもないが、「海水丸ごとの塩」とは、わざわざ作らなくても海水自体がそのスープ(水溶液)。以前、塩の代わりに海水を使ったスープの味を思い出した。「馬鹿は死ななきゃ治らない」のか。
ただ、その試作を行った際、得たものがあった。結果的に塩が強烈に苦くなったのは、実は最後の最後の段階で、そこに至るまでには過程があったのだ。まず、海水が濃くなっていって、塩の出来始めの頃、味はさほど苦くない。その後少しずつ苦味は増していき、あるところから急に苦味が増す。そして最終的に強烈に苦い塩になっていた。見方を変えれば、この急に苦くなる直前は、苦味も心地よくとてもおいしかったのだ。一度は試作に失敗したが、それはまるで、神様に「(収穫するのは)このタイミングだよ」とささやかれたかのようだった。そのタイミングの塩は、香りはないはずなのに、ほのかに磯の香りさえするような「海を感じる」おいしさだった。そして身体に馴染むその感覚は、必要なもの、身体が欲しがっているものを摂ってる感じがした。
それからというもの、塩の「一物全体」とは、「海水丸ごとの塩」なのではなく、「一物(海)を感じる」味の塩なのではないかと思うようになった。こうして、急激に苦くなる直前で収穫し、そのままの成分・味を袋詰めする、というカンホアの塩の製法の大枠が決まった。
Nha Osawa(オーサワの家)の入口の看板
ベトナムにもマクロビオティックを実践している方が少なからずいます。以前カンホアでも「オーサワ」の名前がポンと出てくる人たちがいて、驚いたことがありました。桜沢如一氏も里真夫人とともに、かつてはベトナムを訪れ、直接マクロビオティックを伝えました。そして、現在でもその食材店、“Nha Osawa(オーサワの家)”がサイゴンの町中にあります。残念ながら、今はそのお店で食事はできませんが、ベトナム産の(無農薬・契約栽培の)玄米、梅干し、三年番茶、味噌などなど、その品揃えにはビックリします。また、ベトナム特有のものとして、玄米製のライスペーパーやフォー(乾麺)もあり、とっても素朴でおいしいのです。マクロビオティックに興味のある方で、ベトナムへご旅行される方は、是非一度足をお運びください。小さいお店で、頑張ってますよー。
(写真左 2006年1月撮影)
左から、息子さんのトゥエット氏、私(下条剛史)、来日したこともあるユーハン女史、カンホアの塩現地スタッフ河村きくみ。お店の中で。後ろの壁には、桜沢如一氏・里真夫人の写真が掛けられています。
Nha Osawa(オーサワの家)の住所:
390 Dien Bien Phu, P.17, Q. Binh Thanh, TP. Ho Chi Minh, Viet Nam
新しいマクロビオティック食品店
2009年5月にベトナムへ行った際、サイゴンに新しいマクロビオティックの食料品店がオープンしていました。上で紹介している“Nha Osawa(オーサワの家)”のライバル店にもなります。店舗内は明るく、何となくこっちの方が入りやすい感じは否めません。私が訪れた際も、若いカップルが買い物に来ていて、お気軽な感じで玄米などを買っていたのが印象的でした。場所もこちらの方がサイゴンの中心に近い。商品アイテムは“Nha Osawa”とほとんど変わらない。“Nha Osawa”のようにお店の人に話を聞いた訳ではないので、詳しいことは分からないが、“Nha Osawa”が「昔ながら」とすれば、こちらは「今どき風」な感じだ。ベトナムでもマクロビオティックを取り入れている人が増えていることは間違いなさそうです。この新しいお店は2009年5月現在、以下の2軒ある。私が訪れた写真のお店は、Vo Thi Sau通りの方。
“CHAN NGUYEN”
82 Nguyen Du, P.Ben Nghe, Q.1 tel : 22422372
96H Vo Thi Sau, P.Tan Dinh, Q1 tel : 38251659