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参考:少しディープな説明

はじめに

このページは、あくまで参考ページです。
「簡単に作ってしまいたい」と思っている方は、読まなくても大丈夫な、マニアックな内容です。

まず、梅干し作りは、原材料を選ぶところから始まります。主役である梅を選び、次に脇役の塩と赤ジソ。原材料を選んだ後は、ご自分に合った(好みの)塩の割合を決めます。その割合は、選ぶ原材料によっても変わります。当サイトの「正統派・梅干しレシピ」では、平均的と思われる「塩分18%」と紋切り型で書いてしまってますが、本当は皆さんが選んだ原材料、そして味覚的な好みにあった塩分で作って頂くのが一番です。そのあたりを中心にちょっとディープな説明をしてみます。

それと、梅シロップ、赤じそシロップについて。これらは梅干しとは直接は関係ありませんが、梅干しの仕込みのときに一緒に作ると、梅干しが作りやすくなるということもあって、書きました。

● もくじ ●

1.梅と塩の基本的な関係

2.梅について

3.塩について

4.多めの梅を準備して、梅シロップ

5.多めの赤じそを準備して、赤じそシロップ

1.梅と塩の基本的な関係

正統派・梅干しの材料は、梅・塩・赤ジソだけ。白梅干しがそうですが、基本は梅と塩です。そして大ざっぱに、梅は酸っぱいもの。そして、塩はしょっぱいもの。塩分量を決めるにあたって、塩を少なめにすると(梅を多めにすると)酸っぱい梅干しに、逆に塩を多めにすると(梅を少なめにすると)しょっぱい梅干しになります。つまり、

『(梅の)酸っぱさ』と『(塩の)しょっぱさ』のバランス

がとても大切なこととなります。しかし、梅も塩もさまざまなものがあるので、説明が必要になります。

お店などで買う梅は、たとえ「南高梅」とあっても、細かくは「南高梅」でも品種がいろいろあったり、産地も様々。その年の気候でもサイズ・味に影響があるでしょう。したがって、「今年の梅は・・・」ということになります。このへんが難しいと同時に面白いところ。年々違う梅を使っても、塩の分量で、ある程度この「酸っぱさとしょっぱさ」のバランスをコントロールすることは出来ます。また、庭に梅の木があるなど、毎年同じような梅を使うことが出来る方は、例えば梅の量(重さ)を固定して、塩の量だけを変えてみると、塩分による違いが分かりやすいでしょう。年に一度なので、レシピをメモっておくといいです。梅に合わせ、お好みに合わせ、塩の量を変えながら、自分好みのオリジナルレシピに辿り着いて頂けたら、嬉しいです。

2.梅について

梅の実はかなりの品種があり、それぞれで酸味の強さなど味、果肉の柔らかさや水分、皮の厚さ・味、香りなど異なります。全国的に有名なのは、「南高梅」、「白加賀」ですが、その他にも、たくさんあります。「南高梅」が最もポピュラーなのは、大粒で柔らかい果肉が厚く(大粒な割に種が小さく)、皮が薄いため、果肉たっぶりの梅干しに仕上がるからでしょう。苦味などクセも少ない。また「白加賀」は「南高梅」に比べ、ややクセがありますが、それが個性にもなります。

梅自体の味とともに大事なのが果肉の量による違いです。例えば、同じ2kgの梅でも、肉厚で果肉が多い梅とそうでない梅では全体の果肉量が違います。先に、「塩を少なめにすると(梅が多いと)酸っぱい梅干し・・・」と書きましたが、それは単に計った梅の重さではなく、厳密には、水分を含むその果肉の総量によります。ですから、果肉の多い梅の場合は、塩分も多めでもよく、逆に小梅など比較的果肉の少ない梅の場合は、塩をやや少なくすることで、そのバランスをとります。

例えば、果肉の厚い梅1kgは、薄い梅1.2kgに相当することもあるでしょう。また味として、酸っぱさやときには苦味を多めの梅は、やや塩が多い方がバランスがいいでしょう。反対に、梅の味にクセが少ない場合は、少なめの塩がいいでしょう。お好みによって、梅の果肉量や味の違いによって塩分量を変えてみるのもひとつの方法です。

そして出来上がった梅干しの酸味や苦味、塩辛味が強過ぎると感じたときは、もう1〜3年置いてみてください。

以前、私が白加賀を使って白梅干しを作ったときのこと。干し終わったばかりはもちろん、1年たった後も、やたらと苦味が強くて「困ったな」と思ったことがありました。そしてそのまま流しの下の収納の奥にしまったまま忘れていました。2年後(仕込んでから3年後)に、収納を整理していてその梅干しに気がつき食べてみると、苦味がグッと柔らかくなっていて全体的に奥深い味に変わっていて驚きました。この変化の科学的な根拠は分かりませんが、それは南高梅にはない独特のおいしさでした。

クセが強すぎる味になったのは、下準備のアク抜き(水に漬ける)が足りなかったかも知れません。しかし、あまり長く水に漬けすぎても梅が傷む方向に進んでしまうので、その判断は難しいものです。

また、塩辛みが強過ぎても、1〜3年置くだけで、「塩慣れ」してそのしょっぱさが柔らかくなります。

1〜3年は長いですが、そのまま置いておくだけでおいしくなることがあるのです。出来た梅干しは腐ることはないので、収納する場所さえあれば、そこで終わりではありません。時間はかかりますが、クセの強い梅ほど長く時間をおくと、個性的な梅干しになることが多いと思います。

3.塩について

塩によって、成分・味はいろいろなので、ここではカンホアの塩を中心に書きます。

● 成分と味 ●

まず、その成分・味は塩によって意外と違います。カンホアの塩の場合、例えばしょっぱいNaCl(塩化ナトリウム)は86%ほど。100%近い塩と比べると10%以上違います。単純にこれで仕上がる梅干しのNaCl量が10%以上違ってきます。また、NaCl(ナトリウム分)以外の、マグネシウム分(苦味)、カリウム分(酸味)、カルシウム分(淡いエグ味)等々の成分で、複雑さ・奥行きのある塩味になり、梅干しの熟成も促すと感じています。

また、水分も塩によって様々です。カンホアの塩はおよそ5-6%。これは最後に天日に干しての状態です。天日に干す前の水分は15%近いので、そのときのNaClは80%ほどです。NaClが100%近い塩の水分はほとんどゼロの場合が多いですし、日本の釜焚き塩の水分はおおむね10%あります。塩の成分をチェックする際は、水分量も含めた数字が分かった方がいいのですが、水分は成分にはならないため、塩の水分量は、(カンホアの塩を含め)通常、成分としてパッケージに表示されません。詳しく知りたい方は、各々の塩のホームページなどで調べるしかありません。

カンホアの塩と他の塩との違い(FAQ)

● 性質 ●

また、カンホアの塩では、ナトリウム分(NaCl)に次いで2番目に多いマグネシウム分(苦味)は「湿気やすい・溶けやすい」性質です。これは塩を梅にからめやすくさせます(右の写真参照)。「湿気やすい・溶けやすい」性質が梅の表面に微妙についた水分に溶けやすく馴染みやすくなるからです。さらに、塩漬けの間、梅の実から浸透圧で出る水分にも溶けやすいため、梅酢が上がるのを促します。

● 防腐効果 ●

梅干し作りの塩の目的は、味の他に、防腐効果があります。塩分を多くすれば、その効果は高まるのでカビが生えにくくなるし、低くすると衛生面をより気をつけなくてはならなくなります。

ちなみに私は、塩分10%で作ったことがあります。容器などの熱湯消毒はいつもより念入りにして、焼酎を使いました。それで全くカビは生えなかったので、10%ぐらいなら、ご家庭で可能な範囲と思います。ただ、先に書いた「酸っぱさとしょっぱさのバランス」という意味で、「やけに酸っぱい梅干し」になったので、それからは梅に応じて、15〜18%ぐらいで作っています。

ちなみに、「正統派・梅干しレシピ」では塩分を18%にしています。その理由は、だいたいどんな味・果肉量の梅でも無難で、カビも生えにくい塩分量だからです。ですから、小梅など明らかに果肉の少ない梅の場合は15%ぐらいがいいでしょう。また、市販のいわゆる「低塩梅干し」には塩分5%のものもありますが、その多くは糖分などで防腐効果が高められており、甘めの味になっています。

4.多めの梅を準備して、梅シロップ

梅の実はとてもデリケート。虫がつきやすいため、無農薬栽培は難しいと言われます。虫が食ってるものがあったり、ちょっとぶつかっただけで、すぐに傷がついたり変色(濃い茶色)します。それでも、(皮ごと食べる)梅干しの梅は無農薬がいいなと思う私の場合は、

これで梅1kgにハチミツ1000cc
漬けて10日後ぐらい

3kgの梅を漬けるときは、4kgの梅を買います。

Step1. 梅の下ごしらえ」で、ひとつひとつヘタとりをしながら選別しますが、その選別の際に、3kg分は、「傷・変色・虫食い無し」を中心に選び、残りはハチミツ漬け、梅酒、梅ジャムなど、梅干し以外に使います。梅干しの皮は破けてない方がいいですが、梅干し以外なら、変色している部分を包丁で切り取った梅でも気になりません。

例えば梅シロップ(ハチミツ漬け)はとても簡単。容器とハチミツがあれば出来ます。水洗い後、水気を切った梅を容器に入れ、ハチミツを加える。以上。ときどきかき混ぜたり天地返ししたりするとなおよし、ぐらいです。我が家では梅1kgにハチミツ1kgぐらいの割合です。1週間後ぐらいから右写真のようになりますが、出来たら1ヶ月置くと、梅の味・香りがしっかり汁に出ます。また漬け始めて2〜3日後ぐらいから、発酵による炭酸ガスが発生します。(右の写真のような)密封容器の場合は、ときどき封を開けてガス抜きしましょう。瓶(カメ)など密封しない容器の場合は、置き場所によって蟻対策が必要になります。蟻返し(水を張った皿に置く)などが有効です。飴色になった汁を氷水や炭酸水で割る。暑い日には特においしい。酒好きの大人は、焼酎やウォッカ・ジンと炭酸で割って、梅をひとつのせる。もちろん梅はそのまま、お茶請けにも。

こうして、多めの梅を準備して、梅干し以外の副産物を一緒に作ると、傷・変色・虫食いのある無農薬の梅でも、作りたい量の梅干しを皮が破けていない状態で作ることが出来ます。

5.多めの赤じそを準備して、赤じそシロップ

赤じそを購入する際、「何束買おうかな?」と迷うことがあります。この「正統派・梅干しレシピ」では、「赤じその太い茎を取り除く」という工程があるので、なおのこと、適した束数が分かりにくいかも知れません。でも、私の場合、やや多めの赤じそを買って、ちょうどの量の赤じそを梅干し用に使い、余った赤じそと取り除いた太い茎も使って、「赤ジソシロップ」を作ります。材料は、

  • 余った赤じそと取り除いた太い茎
  • クエン酸(またはレモン汁)
  • 砂糖(またはハチミツ)

大きめの鍋とガラスビンなどの容器があればOKです。

赤じその香りと淡い渋みに、クエン酸の酸味と砂糖の甘味が加わります。色はきれいな赤。クエン酸と砂糖は、最初少しずつ加え、お好みにします。シロップ(割って飲む用)なので、やや濃いめがいいでしょう。その方が日持ちもします。

梅シロップと違い、湯を沸かす手間はかかりますが、作り方は簡単です。余った赤じそと取り除いた太い茎を鍋に入れ、ヒタヒタに浸かるぐらいまで水を入れ、火にかけます。沸騰し、湯が黒っぽくなったら、火を止め、赤じそと太い茎を鍋から取り除いた後、クエン酸(またはレモン汁)と砂糖(またはハチミツ)を加え溶かします。黒っぽい色がクエン酸に反応して赤色に変わります。粗熱が冷めたら、ガラスの容器に移して冷蔵庫へ。暑い日に、水や炭酸で割ったり、かき氷のシロップとしても爽やかでおいしいです。

また、2021年、たまたま梅シロップがダブついたことがキッカケで、私は梅シロップを、上記材料の「クエン酸と砂糖」の代わりに使ってみたことがあります。梅の酸味の主成分もクエン酸なので。粉末状の(安価な)クエン酸に比べると、贅沢ですが、酸味が丸くなり、とてもおいくなりました。詳しくは、下記のブログにて。

関連ブログ:赤じそ+梅シロップの「赤じそシロップ」(2021年7月9日)

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